愛と幻想のファシズム(上) (講談社文庫)

愛と幻想のファシズム(上) (講談社文庫)

愛と幻想のファシズム(下) (講談社文庫)

愛と幻想のファシズム(下) (講談社文庫)

総選挙の前に読んでいたけれど感想を。
途中で「たためなくなる。」「誰か死んで終わりだ。」と思いながら読んでいて、いつものパターンで終わってしまった。
主人公はハンターで、狩場での快楽/掟/経験を生きる上での大原則として振る舞う。閉塞感の高まった社会で政治結社「狩猟社」をつくり勢力を拡大していく、、、
作品の根底には私自身も感じている「生きている感覚の乏しさ」があるのではないかと思う。
私自身は、時に強力な自然と向き合うと否が応でも「弱い生き物としての自分」を実感する、殺すことで自らの生を感じることは無いが、森林限界を越えた稜線に出て横殴りの冷風で体温が奪われたり、道を見失いそうになって真っ暗の山でひとりになっている時とか「生きている感覚」をまざまざと感じさせられる。
最大の快楽は「自らの生を実感する瞬間をもつこと。」支配されているとか、その瞬間に限ってはなにも関係ない。ここまで書いて福島の原発事故で放射能汚染があり、自分はただちに死ぬかもしれないと不安で怯えていた時のことを思い出した。あれには「生の実感」はなかったな。ただただ怖かった。どうせ最後はみんな死ぬのにね。不思議。